「最近、チェーンがよく外れる」「ペダルを漕ぐとカチャカチャと音がする」
そんな悩みを抱えていませんか?
自転車の不調は、変速機の調整不足だと思われがちですが、実は「チェーンライン」のズレが原因かもしれません。
チェーンラインは、自転車を快適に走らせるための非常に重要な要素です。
ここが整っていないと、どんなに高級なパーツを使っていても性能を発揮できないばかりか、故障の原因にもなってしまいます。
この記事では、チェーンラインの基礎知識から、自分の自転車のチェーンラインを確認する方法、そしてズレていた場合の調整方法までをやさしく解説します。
チェーンラインとは?基礎知識をわかりやすく解説

自転車のメンテナンスやカスタムについて調べると、必ず出てくる言葉が「チェーンライン」です。
まずは、これが具体的に何を指しているのか、なぜ重要なのかを見ていきましょう。
チェーンラインの正体は「チェーンの通り道」
チェーンラインとは、簡単に言うと「自転車を真上から見たときの、チェーンが通る位置」のことです。
専門的には、「フレームの中心線(縦のセンターライン)から、ギアの中心までの距離」を指します。
自転車のフレームを左右対称に分割する中心線から、前のギア(チェーンリング)までの距離と、後ろのギア(スプロケット)までの距離を測り、その数値で表します。
なぜチェーンラインが重要なのか
チェーンラインが重要な理由は、「チェーンをなるべくまっすぐにするため」です。
自転車のチェーンは、金属のプレートとピンで繋がれており、本来はまっすぐに引っ張られることで最も効率よく力を伝えます。
もし前のギアと後ろのギアの位置が左右にズレていると、チェーンは斜めに掛かることになります。
これを「たすき掛け」とも呼びますが、チェーンが斜めになりすぎると、摩擦抵抗が増えてペダルが重くなったり、パーツが急激に摩耗したりといった悪影響が出ます。
車種によって基準が違う
チェーンラインの適正な位置は、自転車の種類によって異なります。
例えば、変速機のない「ピストバイク(シングルスピード)」では、前後のギアを完全に一直線にするのが理想です。
一方、「ロードバイク」や「マウンテンバイク(MTB)」などの変速機付き自転車では、たくさんのギアを行き来するため、「よく使うギアの位置でまっすぐになる」ように、あるいは「どのギアに入れても無理がない中間地点」になるように設計されています。
一般的なロードバイクでは43.5mm、MTBでは47.5mmや50mmといった基準値(シマノ推奨値など)が設定されています。
チェーンラインが合っていないと起きるトラブル

では、チェーンラインが適正値からズレていると、具体的にどのような問題が起きるのでしょうか。
「なんとなく走れるから大丈夫」と思って放置していると、思わぬ事故や出費につながることもあります。
頻繁なチェーン落ち
最もわかりやすい症状が「チェーン落ち」です。
チェーンラインがズレていると、チェーンが常に横方向へ引っ張られている状態になります。
そのため、段差の衝撃や変速のタイミングで、チェーンがギアから外れやすくなります。
特に、フロントギアを「シングル化(1枚だけにするカスタム)」した際に、チェーンラインの調整を忘れると、走行中に頻繁にチェーンが外れて危険です。
異音(音鳴り)と抵抗感
ペダルを漕いでいるときに、「チャリチャリ」「カリカリ」といった金属音が鳴り続けることはありませんか?
これは、斜めになったチェーンがギアの歯の側面に当たって擦れている音かもしれません。
音鳴りがするということは、それだけ余計な摩擦(抵抗)が発生している証拠です。
エネルギーのロスになるだけでなく、ペダリングの感覚も悪くなってしまいます。
パーツの寿命が縮む
チェーンが斜めに強く擦れ続けると、チェーン自体はもちろん、チェーンリング(前の歯車)やスプロケット(後ろの歯車)も偏って削れてしまいます。
通常よりも早いペースでパーツ交換が必要になり、維持費がかさむ原因になります。
また、ひどい場合にはチェーンが切断してしまうリスクもあります。
変速性能の低下
変速機付きの自転車では、ディレイラー(変速機)の調整をいくら頑張っても、「特定のギアだけ入りにくい」「変速がもたつく」という症状が出ることがあります。
これもチェーンラインのズレが原因であるケースが少なくありません。
フロントディレイラーがチェーンに干渉してしまったり、リアの変速がスムーズに決まらなかったりする場合は、一度チェーンラインを疑ってみる必要があります。
自分の自転車のチェーンラインを確認する方法

愛車のチェーンラインが合っているかどうか、気になってきた方も多いでしょう。
専用の工具がなくても、定規やノギスがあればおおよその数値を確認することができます。
ここでは簡易的な測定方法をご紹介します。
用意するもの
・ノギス(デジタル式が便利です)
・定規(金属製の直尺など)
・メモ帳とペン
ミリ単位の細かい測定になるため、定規よりも「ノギス」を使うことをおすすめします。
100円ショップで売っている簡易的なものでも、大まかな確認には十分使えます。
フロント(前)のチェーンラインの測り方
フロントのチェーンラインは、「フレームの中心からチェーンリングの中心までの距離」です。
しかし、フレームの中心にはパイプがあるため、直接定規を当てることはできません。
そこで、以下の手順で計算します。
1. シートチューブの直径を測り、半分にします。(例:直径28.6mmなら、半径は14.3mm)
2. シートチューブの右側面(外側)から、チェーンリングの歯の中心までの距離を測ります。
3. 「1の半径」と「2の距離」を足したものが、フロントのチェーンラインです。
【ギアの枚数による「中心」の違い】
・ギアが1枚の場合:そのギアの歯の中心までの距離。
・ギアが2枚(ダブル)の場合:インナーとアウターのちょうど中間地点までの距離。
・ギアが3枚(トリプル)の場合:真ん中のギア(ミドルギア)の中心までの距離。
リア(後ろ)のチェーンラインの測り方
リアのチェーンラインは、「ハブのエンド幅の中心からスプロケットの中心までの距離」です。
少し計算が複雑ですが、以下の手順で求められます。
1. エンド幅(OLD)を確認します。ロードバイクなら一般的に130mm、クロスバイクやMTBなら135mmなどです。
2. その数値を2で割って、フレームの中心位置を出します。(例:130mm ÷ 2 = 65mm)
3. リアホイールの右端(ロックナットの端)から、スプロケットの中心位置までの距離を測ります。
4. 「2の数値」から「3の距離」を引いたものが、リアのチェーンラインです。
この計算は少し難易度が高いので、初心者の場合は「目視確認」でも構いません。
チェーンをフロントの基準位置(ダブルなら中間)と、リアのスプロケットの真ん中付近のギアに掛けます。
その状態で真後ろから見て、チェーンがまっすぐになっているかを確認するだけでも、大きなズレを発見できます。
基準値と照らし合わせる
測定した数値が、使っているパーツ(特にクランク)のメーカー推奨値に近いかを確認します。
例えば、シマノのロード用クランクであれば「43.5mm」が一般的です。
数ミリの誤差(±2mm程度)であれば許容範囲とされることも多いですが、5mm以上ズレている場合は調整が必要です。
チェーンラインの調整方法

もしチェーンラインが大きくズレていた場合、どうやって直せばよいのでしょうか。
調整にはパーツの交換や組み換えが必要になるため、少し専門的な作業になります。
代表的な調整方法をいくつか紹介します。
1. BB(ボトムブラケット)での調整
クランクの軸を支える「ボトムブラケット(BB)」で調整する方法です。
古い自転車や普及価格帯のモデルに使われている「スクエアテーパー(四角軸)」タイプのBBであれば、軸の長さ(軸長)が異なる製品に交換することで、クランクの位置を内側や外側に動かせます。
例えば、軸長を短いものに変えれば、チェーンラインは内側(フレーム寄り)に移動します。
2. スペーサーを入れる
現在の主流である「ホローテックII」などの外付けBBや、一部のクランクセットでは、スペーサー(薄いワッシャーのようなもの)を使って調整します。
BBとフレームの間にスペーサーを挟むことで、クランク全体を外側に数ミリ移動させることができます。
ただし、スペーサーを入れすぎると、左側のクランクアームを取り付けるための軸の長さが足りなくなる恐れがあるため、慎重に行う必要があります。
3. チェーンリングの位置を変える
チェーンリング(ギア板)自体を動かして調整する方法もあります。
クランクとチェーンリングの間に薄いワッシャーを挟んで位置を微調整したり、チェーンリングを裏表逆に取り付けたりすることで、数ミリの変化を生み出せます。
また、フロントシングル化のカスタムでは、チェーンリングを取り付ける位置(インナー側かアウター側か)を変えるだけで大きくチェーンラインが変わります。
4. リアホイール側での調整(シングルスピードの場合)
ピストバイクやシングルスピード化キットを使用している場合は、リアスプロケットの位置を調整しやすいです。
ハブ軸上のスペーサーを組み替えて、スプロケットの位置を左右に移動させることで、フロントのチェーンラインに合わせることができます。
これは比較的簡単で、効果も高い方法です。
注意:
調整作業には、クランク抜きやBBツールなどの専用工具が必要です。
また、無理な調整はパーツの破損を招く恐れがあります。
自信がない場合は、測定した数値を持ってプロショップに相談することをおすすめします。
パーツ交換時に気をつけるべきポイント

チェーンラインがズレてしまう原因の多くは、「パーツの交換」や「カスタム」です。
これから改造を考えている方は、以下の点に注意してください。
クランク交換時は「軸長」と「対応BB」を確認
「かっこいいクランクを見つけたから交換したい!」と思っても、そのままポン付けできるとは限りません。
クランクごとに「推奨されるBBの軸長」が決まっています。
これを無視して適当なBBに取り付けると、チェーンラインが狂い、フロントディレイラーが届かなくなったり、チェーンがフレームに接触したりするトラブルが発生します。
ホイール交換とエンド幅
リアホイールを交換する際も注意が必要です。
ロードバイク(エンド幅130mm)に、MTB用やディスクブレーキ用(エンド幅135mmや142mm)のハブを使ったホイールを無理やり履かせようとすると、当然チェーンラインも変わってしまいます。
フレームの規格とホイールの規格が合っているか、必ず確認しましょう。
シングルスピード化の罠
最近人気の「ロードバイクのシングルスピード化」は、最もチェーンラインのトラブルが起きやすいカスタムです。
元々ダブルやトリプルのギアが付いていた場所に、1枚だけのギアを取り付けるため、どうしても位置が偏りやすくなります。
「ナローワイド」と呼ばれるチェーン落ちしにくいギアを使う場合でも、チェーンラインが大きくズレていると効果は半減します。
フロントとリアのラインを一直線に近づけるための微調整が、カスタム成功の鍵となります。
ミックスコンポのリスク
シマノやカンパニョーロなど、異なるメーカーのパーツを混ぜて使う場合や、同じメーカーでも「ロード用」と「MTB用」を混ぜる場合も注意です。
それぞれの設計思想や基準となるチェーンラインが異なるため、ポン付けではうまくいかないケースが多いです。
互換性チャートを確認するか、詳しい人の事例を参考にするのが無難です。
まとめ:チェーンラインを整えて快適なライドを
今回は、自転車の「チェーンライン」について、その意味や確認方法、調整のポイントを解説しました。
少しマニアックな部分ですが、自転車をスムーズに、そして安全に走らせるためには欠かせない要素です。
今回のポイント
・チェーンラインとは、上から見た時の「チェーンの通り道」のこと。
・ここがズレていると、チェーン落ち、異音、パーツの早期摩耗につながる。
・ノギスや定規があれば、自分でおおよその数値を確認できる。
・ロードバイクなら「43.5mm」など、車種ごとに基準値がある。
・クランク交換やカスタムをする時は、チェーンラインの変化に要注意。
もしあなたの自転車が「なんとなく調子が悪い」と感じているなら、一度チェーンラインをチェックしてみてください。
数ミリの調整をするだけで、ペダルを回した時の静かさや、変速のスムーズさに感動するかもしれません。
正しいチェーンラインで、ストレスのない快適なサイクリングを楽しみましょう。



