BB規格一覧!自転車のボトムブラケットの種類と選び方を完全網羅

BB規格一覧!自転車のボトムブラケットの種類と選び方を完全網羅
BB規格一覧!自転車のボトムブラケットの種類と選び方を完全網羅
パーツ・用品・スペック

自転車のメンテナンスやカスタムにおいて、最も頭を悩ませるパーツの一つが「ボトムブラケット(BB)」ではないでしょうか。「BB規格一覧」と検索しても、専門用語や数字が並び、どれが自分の自転車に合うのか判断するのは簡単ではありません。JIS、ITA、BB86、BB30、そして最新のT47まで……。規格の乱立は、まさに「沼」とも呼ばれる複雑さです。

しかし、BBはペダリングの力を受け止める心臓部であり、走りの質を左右する重要なパーツです。この記事では、複雑なBB規格を「スレッド式」「プレスフィット式」「最新トレンド」に分類し、初心者の方にも分かりやすく一覧で解説します。あなたの愛車にぴったりのBBを見つけるための手助けとなれば幸いです。

BB規格一覧を見る前に知っておきたい基礎知識

BB規格の一覧表を見る前に、まずは「何を確認すればいいのか」という基礎知識を押さえておきましょう。これを知らないと、せっかく規格表を見ても自分のフレームに合うかどうか判断できません。確認すべきポイントは主に3つだけです。

ボトムブラケット(BB)の役割と構造

ボトムブラケット(BB)とは、自転車のフレームの底にある筒状の部分(ハンガーシェル)に装着され、クランクをスムーズに回転させるためのベアリングパーツのことです。人間で言えば股関節にあたる部分で、ここがスムーズに回るかどうかでペダリングの軽さが変わります。

BBは「フレーム側の穴のサイズ(シェル幅・内径)」と「クランク側の軸の太さ(シャフト径)」の両方に適合する必要があります。つまり、フレームとクランクをつなぐアダプターのような役割も果たしているのです。そのため、選ぶ際は「フレームの規格」と「使いたいクランクの規格」の両方を知る必要があります。

シェル幅と内径の測り方

BBを選ぶ際に最も重要なのが「シェル幅」と「内径(またはネジの有無)」です。これらはノギスや定規を使って計測することができます。

シェル幅は、フレームのBB取り付け部分の左右の長さです。ロードバイクでは68mmや86.5mm、マウンテンバイクでは73mmなどが一般的です。ここが1mmでも違うと取り付けができません。

内径は、BBを差し込む穴の直径です。ネジが切ってある場合はネジの規格(JISやITAなど)、ネジがない場合は穴の直径(41mmや46mmなど)を測ります。この数値の組み合わせで規格が決まります。

ワンポイント:
メーカーの公式サイトやカタログの「スペック表」を見るのが最も確実です。「BB Standard」や「Bottom Bracket」の欄に「BSA」や「BB86」といった記載があります。

ネジ切り(スレッド)と圧入(プレスフィット)の違い

BBの取り付け方法は大きく分けて2種類あります。これが規格を見分ける最初の大きな分岐点です。

スレッド式(ネジ切り):
フレームにネジ山があり、BBを回してねじ込むタイプです。昔からある伝統的な方式で、メンテナンスがしやすく、音鳴りトラブルが少ないのが特徴です。最近、その信頼性から再び人気が高まっています。

プレスフィット式(圧入):
フレームにネジ山がなく、つるっとした穴が開いているだけです。そこにBBを専用工具でググッと押し込んで(圧入して)固定します。カーボンフレームの軽量化や剛性アップのために生まれましたが、メンテナンスには専用工具が必要で、取り付け精度が低いと「パキパキ」という異音(音鳴り)が発生しやすい欠点もあります。

スレッド式(ネジ切り)BB規格の一覧と特徴

まずは、最も歴史が長く、メンテナンス性に優れる「スレッド式」の規格を見ていきましょう。金属フレームの自転車や、エントリーグレードのロードバイク、クロスバイクの多くはこのタイプです。

JIS(BSA / BSC)規格:最も一般的な標準

世界で最も普及している標準的な規格です。日本車(シマノ製品搭載車)をはじめ、アメリカ、台湾、ヨーロッパの多くのブランドで採用されています。「JIS」「BSA」「BSC」「English」など様々な呼び名がありますが、すべて同じものを指します。

シェル幅はロードバイクで68mm、MTBで73mmです。最大の特徴は、右側(クランク側)が「逆ネジ(左回しで締まる)」になっていること。これはペダリングの回転でネジが緩まないようにするための工夫です。修理や交換用パーツも豊富で、最も扱いやすい規格と言えます。

メモ:
BB本体に「1.37 x 24」と刻印があれば、それはJIS(BSA)規格です。多くのクロスバイクやシマノ系ロードバイクはこれです。

ITA(イタリアン)規格:ロードバイクの名残

名前の通り、イタリアの伝統的なロードバイクメーカー(ピナレロ、コルナゴ、デローザなど)で採用されている規格です。JISとの大きな違いは、シェル幅が70mmであることと、右側も「正ネジ(右回しで締まる)」であることです。

右ワンが正ネジのため、メンテナンス不足だと走行中に緩んでくるリスクがJISより少し高いです。イタリアンバイクに乗っている方は、パーツ購入時に「JIS」と間違えないよう注意が必要です。パッケージには「ITA」や「36 x 24」と記載されています。

フレンチ規格・スイス規格:旧車で見られるレア規格

現在新品で販売されているフレームではまず見かけませんが、ヴィンテージバイクや古いランドナーのレストアをする際に遭遇するのがフレンチ規格やスイス規格です。

フレンチはシェル幅68mmで左右ともに正ネジ。スイスはシェル幅68mmで右側が逆ネジ(JISと同じ)ですが、ネジのピッチ(溝の間隔)が異なります。これらの規格は現代のパーツとの互換性がほとんどないため、専用の古いパーツを探すか、専門的な加工が必要になる「要注意」な規格です。

プレスフィット(圧入)BB規格の主要な種類

2000年代後半から、カーボンフレームの普及とともに爆発的に増えたのがプレスフィット(圧入)式です。フレームメーカー各社が独自の理論で規格を乱立させたため、ここが一番の「沼」エリアです。

BB86 / BB90 / BB92:シマノが推進する安定規格

プレスフィットの中で最も普及しており、トラブルが比較的少ないのがこのグループです。シマノが提唱した規格で、内径41mmのシェルに、樹脂やアルミのカップに入ったベアリングを圧入します。

ロード用はシェル幅86.5mm(通称BB86)、MTB用は91.5mm(通称BB92)です。ベアリングがフレームの幅いっぱいまで配置されるため、ペダリングの安定感があります。TREKの「BB90」はこれに似ていますが、ベアリングをカップなしで直接フレームに埋め込む独自規格なので、BB86とは互換性がありません。

BB30 / BB30A:大口径化のパイオニア

キャノンデールが開発した規格で、クランク軸を太く(30mm径)、軽くすることを目的に作られました。シェル幅は68mm(BB30Aは73mm)ですが、最大の特徴は内径42mmのフレームに、ベアリングを「直接」圧入することです。

非常に軽量で剛性が高い反面、フレームの穴の精度がシビアです。少しでも精度が悪いとすぐに「パキパキ」と音鳴りが発生しやすく、メンテナンス頻度も高めです。多くのユーザーを悩ませた規格でもありますが、レース機材としての性能は一級品です。

PF30 / PF30A:音鳴り対策の進化形

BB30の音鳴り問題を解消するために、SRAMなどが推進した規格です。BB30と同じく30mm軸のクランクを使いますが、内径46mmのフレームに、樹脂カップに入れたベアリングを圧入します。

樹脂カップがクッションの役割を果たし、BB30よりは音鳴りがしにくくなっています。しかし、それでも圧入式特有のトラブルはゼロではありません。キャノンデールの「PF30A」はシェル幅が左右非対称になっている独自仕様なので、通常のPF30とは区別が必要です。

BB386EVO:剛性と互換性のいいとこ取り

FSAが提唱した、現在のプレスフィット規格の中で「最もバランスが良い」と言われる規格です。シェル幅はBB86と同じ86.5mmで、内径はPF30と同じ46mmです。

つまり、BB86の「幅広で高剛性」というメリットと、PF30の「太い30mm軸が使える&軽量」というメリットを合体させたものです。多くのクランクに対応できる汎用性の高さが魅力で、BHやMERIDAなどのメーカーが採用しています。

最新トレンド!T47規格と独自規格について

プレスフィットの音鳴り問題に疲弊した市場に対し、近年新たな動きが出ています。「原点回帰」とも言える最新規格と、有名メーカーの独自規格について解説します。

T47(スレッドフィット):メンテナンス性の回帰

今、最も注目されている最新規格が「T47」です。TREKなどの大手メーカーも最新モデルで採用を始めています。簡単に言えば「プレスフィットのサイズ感を持ったネジ切りBB」です。

内径46mm(PF30と同等)の大きなシェルにネジを切り、BBをねじ込んで固定します。これにより、太い30mm軸のクランクも使え、ケーブル類をフレーム内部に通すスペースも確保しつつ、ネジ切り特有の「音鳴りの少なさ・整備性の良さ」を実現しました。まさにイイトコ取りの救世主的な規格です。

T47のバリエーション(インターナル・エクスターナル)

T47には大きく分けて2つのタイプがあります。ベアリングがフレームの内側に収まる「インターナル」と、外側に出っ張る「エクスターナル」です。

基本的にはフレームのシェル幅によって使い分けられます。シェル幅86.5mmなどのフレームにはインターナルを、68mmのフレームにはエクスターナルを使用します。T47対応のBBを購入する際は、自分のフレームがどちらのタイプを想定しているか確認が必須です。

T47の主なタイプ
・T47 Internal:シェル幅86.5mmなど(ベアリング内蔵)

・T47 External:シェル幅68mmなど(ベアリング外付け)

※TREKなどはT47 85.5mmという微妙に異なるサイズもあるため注意!

CervéloのBBright:左右非対称の独自設計

エアロロードで有名なCervélo(サーヴェロ)が採用する独自規格です。「BBright(ビービーライト)」と呼ばれ、シェル幅79mmで、左側(ノンドライブサイド)だけが大きく張り出した左右非対称の形状をしています。

チェーンリングがある右側のスペースは確保しつつ、左側のフレームパイプを太くして剛性を上げるための設計です。専用のBBが必要ですが、アダプターを使えばシマノなどの一般的クランクも使用可能です。

クランク軸径とBBの互換性をチェック

フレームのBB規格が分かったら、次は「クランクの軸の太さ」を確認します。BBの内径とクランクの軸径が合わないと装着できません。主要な3つのサイズを覚えましょう。

24mmシャフト(シマノホローテックIIなど)

最もメジャーなサイズです。シマノの「ホローテックII」クランクは、軸径が24mmで統一されています。耐久性が高く、変速性能も世界一と言われるシマノクランクを使いたい場合は、この24mmに対応したBBを選びます。

BB30などの大口径BBフレームにシマノクランクを付けたい場合は、「変換BB」や「アダプター」を使用することで取り付けが可能になります。

30mmシャフト(FSA, Rotorなど)

BB30やPF30規格に合わせて作られた、太くて軽いアルミニウム製のシャフトです。軸径は30mmです。FSA、ROTOR、Cannondaleの純正クランクなどがこれに当たります。

剛性が高く軽量ですが、24mm軸用のBB(JISやBB86など)のフレームに取り付けるには、ベアリングが薄くなりすぎて耐久性が落ちる場合があるため、パーツ選びには慎重さが必要です。

SRAM DUB規格(28.99mm):新時代のスタンダード

アメリカのコンポーネントメーカーSRAM(スラム)が近年開発した新規格が「DUB(ダブ)」です。シャフト径は28.99mmという非常に中途半端な数字ですが、これには理由があります。

24mmの耐久性と、30mmの軽量・高剛性を両立させるために計算されたサイズで、専用のBBを使えば、JIS、BB30、PF30など、ほぼ全てのフレーム規格に取り付け可能です。「迷ったらDUB」と言えるほど互換性が高く、現在SRAMの主流となっています。

BB規格一覧から選ぶ際の失敗しないポイント

最後に、実際にBBを購入・交換する際に失敗しないためのポイントをまとめます。

フレームのシェル幅を正確に計測する

「たぶん68mmだろう」という思い込みは危険です。特にMTBやグラベルロードなどは73mmの場合も多いですし、ロードバイクでもメーカーによって独自の幅を採用していることがあります。必ず実測するか、フレームのマニュアルを確認してください。

使用したいクランクのメーカーを確認する

「フレームはBB30規格」で、「クランクはシマノ(24mm軸)を使いたい」というケースは非常に多いです。この場合、純正のBB30ベアリングではなく、「BB30フレームにシマノクランクを付けるための変換BB」を買う必要があります。
単に「BB30用」と書かれたものを買うと、30mm軸用のベアリングが届いてしまい、シマノクランクがスカスカで付きません。

変換アダプターBBの活用方法

プレスフィットBBの音鳴りに悩んでいる方におすすめなのが、「スレッド式のように左右で嵌合(かんごう)するタイプのBB」です。
WISHBONE(ウィッシュボーン)やTOKEN(トーケン)といったメーカーから発売されており、圧入式フレームなのに、BB自体が左右でネジ止めし合う構造になっています。これによりガッチリ固定され、音鳴りが劇的に解消します。少し高価ですが、メンテナンスの悩みから解放される価値あるパーツです。

まとめ:BB規格一覧を理解して愛車のメンテナンスを楽しもう

まとめ
まとめ

ボトムブラケット(BB)の規格は一見すると複雑怪奇ですが、分解して考えると「フレームの取り付けタイプ(ネジか圧入か)」「サイズ(幅と内径)」、そして「クランクの軸径」の組み合わせに過ぎません。

自分の自転車が「JIS(ネジ切り)×シマノ(24mm)」なのか、「BB86(圧入)×シマノ(24mm)」なのか、あるいは「BB30(圧入)×30mm軸」なのか。この組み合わせさえ特定できれば、必要なパーツは自ずと絞り込まれます。

BBは目立たないパーツですが、交換することでペダリングが軽くなったり、不快な異音が消えたりと、効果を実感しやすい部分でもあります。ぜひこの記事の規格一覧を参考に、愛車にぴったりのBBを見つけて、快適なサイクルライフを楽しんでください。

 

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