クロスバイクやマウンテンバイクで長い距離を走っていると、次第に手のひらがジンジンと痺れたり、手首が痛くなったりすることはありませんか?それは、ハンドルを握る手への負担が原因かもしれません。
そんな悩みを抱えるサイクリストたちの間で、絶大な支持を集めているのがドイツ生まれの「エルゴングリップ」です。人間工学(エルゴノミクス)に基づいた独特な形状は、一度使うと元のグリップには戻れないと言われるほどの快適さを提供してくれます。
この記事では、なぜエルゴングリップが選ばれるのか、その理由から豊富な種類の選び方、そして取り付けのコツまで、やさしく丁寧に解説していきます。
エルゴングリップとは?選ばれる理由と効果

自転車のグリップといえば、一般的には円筒形のシンプルなゴム製品を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、エルゴングリップは一目でそれとわかる特徴的な形をしています。
この章では、世界中のサイクリストに愛されるエルゴングリップの基本的な特徴と、なぜ手の痛みが軽減されるのか、そのメカニズムについて解説します。
独特な「翼」の形状が手のひらを支える
エルゴングリップ最大の特徴は、グリップの端が平たく広がった「ウィング形状」です。この翼のような広い面が、手のひら全体を面で支える役割を果たします。
通常の丸いグリップでは、ハンドルを握る力が一点や線に集中してしまいがちです。しかし、エルゴングリップはこの広い面によって接地面積を約40%も拡大し、体重を分散させることができます。まるで手のひらに吸い付くようなフィット感は、これまでのグリップとは全く異なる体験となるでしょう。
人間工学に基づいた設計で痺れを防ぐ
サイクリング中の手の痺れは、手のひらを通る「尺骨神経(しゃっこつしんけい)」が圧迫されることで起こりやすくなります。また、手首が不自然に曲がった状態でハンドルを握り続けることも、痛みの大きな原因です。
エルゴングリップは、手首の角度を自然な状態に補正し、神経への圧迫を劇的に減らすように設計されています。医学的な見地からも考え抜かれたこの構造こそが、「エルゴノミクス(人間工学)」の名を冠する理由なのです。
ドイツ生まれの高い品質とデザイン性
エルゴン(ERGON)は、自転車大国ドイツのブランドです。機能性はもちろんのこと、ドイツ製品らしい質感の高さやデザインの良さも人気の秘密です。
安価なコピー商品も出回っていますが、ラバーの耐久性や芯材の強度、そして何より握ったときの「コシ」のある感触は、本家エルゴンならではの品質です。長く快適に自転車を楽しみたいなら、信頼できる正規品を選ぶことをおすすめします。
豊富なラインナップ!GPシリーズの違いを比較

エルゴングリップにはいくつかのシリーズがありますが、クロスバイクやミニベロなどの街乗り・ツーリング用途で最も定番なのが「GPシリーズ」です。
このGPシリーズには、バーエンドバー(角のような突起)の有無や長さによって複数のモデルが存在します。ここでは、それぞれのモデルの特徴と、どんな人に適しているかを詳しく見ていきましょう。
定番中の定番「GP1」の特徴
「GP1」は、バーエンドバーが付いていない最もベーシックなモデルです。見た目がシンプルなので、自転車のデザインを崩したくない方や、街乗りがメインの方に選ばれています。
バーエンドバーがないとはいえ、エルゴングリップ特有のウィング形状による快適性は十分に発揮されます。手のひらの痛みだけを解消したい、まずはエルゴンの良さを体験してみたいという方にとって、最初の一歩として最適な選択肢です。カラーバリエーションが豊富なのも嬉しいポイントです。
少しポジションを変えたいなら「GP2」
「GP2」は、指2本分ほどの小さなバーエンドバーが付いたモデルです。この小さな突起があるだけで、ハンドルの握り方を少し変えることができ、長時間の走行で手首の疲れをリセットしやすくなります。
バーエンドバーが短いため、駐輪時に邪魔になりにくく、見た目もスポーティーにまとまります。街乗りでの使い勝手と、ちょっとした遠出での快適さを両立させたい方に非常に人気のあるモデルです。
しっかり握れるバーエンド付き「GP3」
「GP3」は、GP2よりも少し長い、指3本分ほどのバーエンドバーを備えています。この長さになると、バーエンド部分をしっかりと握り込んで、坂道を登るときに力を入れたり、平地で前傾姿勢をとったりすることが容易になります。
本格的なサイクリングや、週末に数十キロ走るような用途であれば、GP2よりもGP3の方がポジションの自由度が高くおすすめです。バーエンド部分には滑り止めのラバー加工が施されており、確実なグリップ力を発揮します。
長距離ツーリングに特化した「GP5」
「GP5」は、シリーズの中で最も長いバーエンドバーを持つモデルです。以前はGP4というモデルもありましたが、現在はGP5がロングバーエンドの代表格となっています。
大きなカーブを描くバーエンドバーは、複数の場所を握ることができるため、長距離ツーリングにおいて絶大な威力を発揮します。疲労に合わせて頻繁に手の位置を変えられるのは、ロングライダーにとって大きな助けとなります。ただし、存在感かなり大きいため、車体の保管スペースには注意が必要です。
サイズ選びと変速機への対応

モデルが決まったら、次は「サイズ」と「長さ(タイプ)」を選ぶ必要があります。ここがエルゴングリップ選びで最も迷いやすいポイントですが、知ってしまえば簡単です。
自分の手の大きさや、自転車の変速機のタイプに合わせて、正しいものを選びましょう。
SサイズとLサイズの違いは「太さ」
エルゴングリップには「Sサイズ」と「Lサイズ」がありますが、これはグリップの長さではなく握る部分の「太さ」の違いです。
Sサイズ:手袋のサイズがS〜Mの人向け。または、太いグリップよりも細身でコントロール性を重視したい人におすすめ。
Lサイズ:手袋のサイズがL〜XLの人向け。または、手が大きくなくても、接触面積を最大化してクッション性を最優先したい人におすすめ。
一般的に、日本人の平均的な手の大きさであれば「Sサイズ」の方が握りやすく、ブレーキ操作もしやすいと言われています。迷ったらSサイズを選んでおけば間違いが少ないでしょう。
変速機に合わせた「ロング」と「ショート」
次に確認すべきはグリップの「長さ」です。これは自転車の変速レバー(シフター)の形状によって選び分けます。
| 表記 | 内容 | 対応する自転車 |
|---|---|---|
| ロング / ロング | 左右とも長い | 一般的なクロスバイク(トリガーシフト) |
| ロング / ショート | 右だけ短い | 右側だけ回転式変速(グリップシフト) |
| ショート / ショート | 左右とも短い | 両側が回転式変速(グリップシフト) |
最近のクロスバイクの多くは、親指と人差指でレバーを操作する「トリガーシフト」を採用しているため、「ロング / ロング」を選ぶのが基本です。もし、グリップ自体を回して変速する「グリップシフト」の自転車に乗っている場合は、ショートタイプを選ばないと変速操作ができなくなるため注意してください。
素材やスポーツモデルも!その他の選び方

GPシリーズ以外にも、エルゴンには特定の目的に特化したシリーズや、素材にこだわったモデルが存在します。
ここでは、よりスポーティーに走りたい方や、見た目の質感にこだわりたい方に向けた選択肢をご紹介します。
おしゃれで快適な「バイオコルク」
機能性だけでなく、見た目のナチュラルさも大切にしたい方には「バイオコルク」モデルがおすすめです。GP1やGP3などの主要モデルには、グリップの一部に天然コルク素材を使用したバージョンが用意されています。
コルク特有のさらっとした肌触りは、夏場でもベタつきにくく快適です。また、コルク自体が持つ抗菌作用や振動吸収性も期待できます。クラシックなクロモリフレームの自転車や、カジュアルな服装で乗る街乗り自転車に非常によく似合います。
レースやMTB向けの「GS」「GA」シリーズ
GPシリーズは快適性を最優先していますが、よりアクティブに走りたい方には「GS」シリーズや「GA」シリーズがあります。
純粋に「手の痛みをなくしたい」という目的であればGPシリーズが一番ですが、マウンテンバイクで山道を走る場合や、柔らかすぎるグリップが苦手な場合は、これらのスポーツモデルを検討してみると良いでしょう。
エルゴングリップの正しい取り付けと調整方法

最適なグリップを手に入れたら、最後は取り付けです。エルゴングリップの取り付け自体は簡単ですが、その効果を100%引き出すためには「角度調整」が非常に重要になります。
ここでは、基本的な交換手順と、快適さを左右するセッティングのコツを解説します。
古いグリップの外し方と取り付け
まずは現在ついているグリップを取り外します。再利用しないのであれば、カッターナイフで切って外すのが一番早くて簡単です。ハンドルバーを傷つけないように注意しましょう。
再利用したい場合や、接着剤で固着していない場合は、グリップとハンドルの隙間にパーツクリーナーを吹き込むと、滑りが良くなり抜きやすくなります。ハンドルバーに残った汚れや古い接着剤はきれいに拭き取ってください。
エルゴングリップの取り付けは、ハンドルバーに差し込んでボルトを締めるだけです。4mmまたは5mmの六角レンチ(アーレンキー)を使用します。
角度調整が快適さの最大のポイント
取り付け時に最もこだわってほしいのが「角度」です。ウィング部分が上を向きすぎても、下を向きすぎても、効果は半減してしまいます。
調整の目安:
自転車にまたがり、リラックスした姿勢でハンドルに手を置きます。このとき、腕から手首、手の甲にかけてのラインが一直線になる角度が理想です。
手首が反り返っていたり、逆に巻き込んでいたりすると、痛みや痺れの原因になります。まずはボルトを仮止めし、実際に試走しながら微調整を繰り返して、自分にとっての「ベストポジション」を見つけてください。
バーエンドバーの角度と固定
GP2以上のバーエンドバー付きモデルの場合、グリップ部分の角度と、バーエンドバーの角度をそれぞれ独立して調整できるのがエルゴンの優れた点です。
グリップ面で手首の角度を決めたあと、バーエンドバーは「握ったときに脇が軽く締まる」程度の角度に設定すると、力が入りやすくなります。調整が終わったら、指定されたトルク(締め付け強さ)でしっかりとボルトを固定します。走行中に動くと危険ですので、最後に必ずガタつきがないか確認しましょう。
まとめ
今回は、自転車の手の痛みを解消する「エルゴングリップ」について解説しました。
ただのゴムの塊に見えるグリップですが、エルゴンに変えるだけで「自転車ってこんなに楽に乗れるものだったのか」と驚く方は少なくありません。
- GP1:初めての方、シンプル派に
- GP3:坂道も走る、週末サイクリング派に
- Sサイズ:迷ったらこれ(多くの日本人にフィット)
- 角度調整:手首が真っ直ぐになる位置を探す
自分にぴったりのエルゴングリップを見つけて、痛みから解放された快適な自転車ライフを楽しんでください。



