Stanchion(スタンチオン)とは?MTBサスペンションの重要パーツを解説

Stanchion(スタンチオン)とは?MTBサスペンションの重要パーツを解説
Stanchion(スタンチオン)とは?MTBサスペンションの重要パーツを解説
パーツ・用品・スペック

マウンテンバイク(MTB)に乗っていて、フロントサスペンションのキラリと光るパイプ部分に目が留まったことはありませんか?そのパーツこそが「Stanchion(スタンチオン)」です。別名「インナーチューブ」とも呼ばれ、サスペンションの性能や見た目を大きく左右する重要な役割を担っています。

スタンチオンは、路面からの衝撃をスムーズに吸収するために常に動き続けている働き者です。しかし、実はとてもデリケートで、少しの傷がサスペンション全体の不調につながることもあります。今回は、このスタンチオンの基礎知識から、サイズによる走りの違い、そして大切な愛車を守るためのメンテナンス方法まで、やさしく解説していきます。

Stanchion(スタンチオン)の基礎知識と役割

まずは、スタンチオンがサスペンションのどの部分を指し、具体的にどのような仕事をしているのか、基本的な構造から見ていきましょう。

サスペンションの「上」か「下」か

一般的なMTBのサスペンションフォークは、2つの筒が重なり合って伸縮する構造をしています。このうち、上側にある細いパイプの部分が「スタンチオン(またはインナーチューブ)」です。対して、下側の太い部分は「アウターレッグ(またはロワーレッグ)」と呼ばれます。スタンチオンは、アウターレッグの中に滑り込むように動くことで、衝撃を吸収するためのストロークを生み出しています。

滑らかな動きを生み出す「摺動面」

スタンチオンの最も重要な役割は、スムーズに動くための「摺動面(しゅうどうめん)」であることです。サスペンション内部にはオイルや空気が入っており、ゴム製のシール(ダストシール)で密閉されています。スタンチオンの表面が鏡のようにツルツルに磨かれているのは、このシールとの摩擦(フリクション)を減らし、小さな衝撃にも敏感に反応してタイヤを路面に追従させるためです。

強度と軽量化のバランス

スタンチオンは、ライダーの体重やブレーキ時の激しい負荷を受け止める「柱」でもあります。そのため、素材には軽量で強度の高いアルミニウム合金や、一部のエントリーモデルではスチールが使われます。メーカーは、強度を保ちつつ、中を空洞にして少しでも軽くするために、金属の厚みを0.1ミリ単位で調整するなど、高度な技術を詰め込んでいます。

スタンチオン径による走りの違いと特徴

カタログやスペック表で「32mm」や「36mm」といった数字を見たことはありませんか?これはスタンチオンの直径(太さ)を表しています。実はこの太さが、バイクの性格や走りの質を大きく変えるのです。

30mm〜32mm:軽快なクロスカントリー向け

細めのスタンチオンは、とにかく「軽さ」が最大の武器です。主にクロスカントリー(XC)や、街乗りを楽しみたいライダーに適しています。登り坂では軽さが有利に働きますが、激しい下り坂や大きなジャンプでは、少し「たわみ」を感じるかもしれません。近年の技術進化により、細くても十分な強度が確保されていますが、ハードな使用よりは軽快さを重視する設計と言えます。

34mm〜35mm:万能なトレイルライド向け

現在のMTBシーンで最も標準的なサイズがこのクラスです。登りの軽さと、下りの安心感を絶妙なバランスで両立しています。トレイルライド(山道での遊び)から、少しアグレッシブな走りまで幅広く対応できるため、初めて本格的なMTBを買う場合もこのサイズが選ばれることが多いです。「迷ったらこれ」と言える、まさにオールラウンダーな太さです。

36mm〜38mm:激しいエンデューロ向け

近年、特に人気が高まっているのがこの太いサイズです。エンデューロレースや、常設コースでのダウンヒル遊びにおいて、圧倒的な剛性を発揮します。太くなることで重量は増しますが、岩場を通過する際や急ブレーキをかけた時の「ヨレ」が少なく、狙ったラインを正確にトレースできます。特に38mm径は、近年のハイスピード化するレースシーンや重量のあるE-MTB(電動アシスト)に合わせて定着してきました。

40mmオーバー:究極のダウンヒル専用

ダブルクラウンと呼ばれる、オートバイのような見た目のダウンヒル(DH)バイクに使われる極太サイズです。崖のような坂を猛スピードで下り降りるための専用設計で、絶対的な剛性と耐久性を誇ります。一般的なトレイルライドでは過剰スペックとなりますが、富士見パノラマのような本格的なダウンヒルコースをメインに走るライダーにとっては、この太さが命を守る信頼感につながります。

サスペンションの寿命を延ばすコーティングの種類

スタンチオンの色が「黒」だったり「金色」だったりするのは、単なるデザインではありません。表面処理(コーティング)の違いによるもので、これも性能に関わるポイントです。

硬質アルマイト(ハードアナダイズド)

最も一般的に見られるのが「黒色」や「銀色」のスタンチオンです。これらはアルミニウムの表面に硬い酸化皮膜を作る「硬質アルマイト処理」が施されています。十分に表面が硬く滑らかで、耐久性も高いため、エントリーモデルからハイエンドモデルまで幅広く採用されています。特に黒色の「ブラック・アルマイト」は、引き締まった見た目で人気があります。

カシマコート(Kashima Coat)

FOXなどの高級サスペンションで見られる、独特の「金色(ゴールド)」のコーティングです。これは日本のミヤキという会社が開発した特殊な処理で、硬質アルマイトの微細な穴に「二硫化モリブデン」という潤滑成分を埋め込んでいます。これにより、通常のアルマイトよりもさらに摩擦が少なくなり、動き出しが驚くほどスムーズになります。また、表面硬度も高いため、傷がつきにくいというメリットもあります。

フリクション(摩擦)との戦い

どのコーティングであっても、目的は「いかに摩擦を減らすか」につきます。サスペンションが動くとき、ゴムシールとの間には必ず抵抗が生まれます。この抵抗が大きいと、小さな凸凹を吸収できず、手がしびれたりタイヤが跳ねたりします。コーティングのグレードが高いと、この「初期動作」がスムーズになり、まるで絨毯の上を走っているような滑らかな乗り心地が得られるのです。

スタンチオンに傷が入る原因と予防策

「スタンチオンの傷はサスペンションの死」と言われるほど、このパーツはデリケートです。では、どのようなシチュエーションで傷がついてしまうのでしょうか。

走行中の飛び石や転倒

最も多い原因は、前走車が跳ね上げた小石が当たったり、転倒して岩にぶつけたりする物理的なダメージです。特に岩場の多いセクションではリスクが高まります。運悪く鋭利な岩角にヒットすると、コーティングが剥がれ、金属の地肌が見えるほどの深い傷が入ってしまいます。これを完全に防ぐのは難しいですが、無理なラインを選ばないことや、プロテクターの役割を果たすフェンダー(泥除け)の装着がある程度のリスク軽減になります。

メンテナンス不足による「泥ヤスリ」

実は走行中の事故以上に怖いのが、日々のメンテナンス不足です。ダストシール(ゴムのパッキン)の周りに泥や砂が溜まったまま走り続けると、その汚れがシールの中に巻き込まれます。すると、内部に入り込んだ砂粒がヤスリのように作用し、サスペンションが伸縮するたびにスタンチオンを削ってしまいます。こうなると縦方向に無数の細かい傷が入り、オイル漏れの原因となります。

車載や保管時の不注意

意外と多いのが、自転車に乗っていない時のトラブルです。車に積む際に他の自転車のペダルが当たったり、壁に立てかけておいた自転車が倒れてコンクリートの角にぶつかったりして傷がつきます。特に複数台を車載する場合は、毛布でスタンチオン部分を覆うなど、接触しないような配慮が必要です。レース会場への移動中こそ、細心の注意を払いましょう。

傷がついた時の対処法と日頃のメンテナンス

もし傷がついてしまっても、すぐに諦める必要はありません。軽度であれば補修できる場合もあります。ここでは、トラブル時の対処法と、傷を防ぐための日常ケアについて解説します。

日頃のケア:マイクロファイバーでの拭き上げ

最も効果的なメンテナンスは、ライド後の「拭き掃除」です。高圧洗浄機で水をぶっかけるのは避けましょう。シールの隙間から水が入り込む可能性があります。代わりに、柔らかいマイクロファイバークロスを使って、スタンチオンとダストシール周りの汚れを優しく拭き取ってください。これだけで、砂噛みによる摩耗を劇的に減らすことができます。

潤滑剤の使用には注意が必要

「動きを良くしたい」と、手元にある潤滑スプレーを吹きかけるのは要注意です。一部の溶剤はゴムシールを傷めたり、逆にホコリを吸着して汚れを呼び寄せたりします。使用する場合は、必ずサスペンションメーカーが推奨する専用品や、ゴムへの攻撃性がないシリコンスプレーを選びましょう。ウエスに少量吹き付けてから薄く塗り伸ばし、余分な油分はしっかり拭き取るのがコツです。

傷がついた時の応急処置:バリ取り

もし石などで傷がついた場合、一番の問題は傷そのものではなく、傷の周囲が盛り上がってできる「バリ(突起)」です。このバリがカミソリのようにシールを切り裂いてしまいます。応急処置としては、非常に細かい(1500番〜2000番以上)耐水ペーパーで、盛り上がったバリの部分だけを慎重に削り落とします。指で触って引っかかりがなくなれば、とりあえずシールの損傷を防ぐことができます。

深い傷の補修とプロへの依頼

爪が引っかかるような深い傷の場合、凹みを埋める必要があります。DIYでは、脱脂した後にマニキュア(トップコート)やエポキシ樹脂を埋め、硬化後に平らに研磨する方法が知られています。しかし、失敗すると症状を悪化させるリスクもあります。高価なサスペンションや、判断に迷うような大きな傷の場合は、無理せずサスペンション専門のショップに相談し、スタンチオンの交換(CSU交換)を検討することをおすすめします。

まとめ

まとめ
まとめ

Stanchion(スタンチオン)について、その役割からメンテナンスまで詳しく見てきました。たった2本のパイプですが、ここにはマウンテンバイクを楽しく、安全に走らせるための技術が詰まっています。

ご自身のバイクのスタンチオン径を知ることで、そのバイクが得意とするフィールドが見えてきますし、黒や金色のコーティングの意味を知れば、機材選びがもっと楽しくなるはずです。そして何より、ライド後の「ひと拭き」という小さな習慣が、高価なサスペンションの寿命を大きく延ばしてくれます。

次の週末は、ピカピカに磨いたスタンチオンで、スムーズなトレイルライドを楽しんでくださいね。

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